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東京高等裁判所 昭和58年(う)718号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人大林清春、同白河浩連名ならびに被告人名義の各控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官小林幹男名義の答弁書にそれぞれ記載されているとおりであるから、これらを引用するが、所論は、要するに、原判決の量刑が重過ぎて不当であるというのである。

そこで、記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも併せて検討すると、本件は、ベアリングの製造販売等を目的として設立された東邦精工株式会社(以下「東邦精工」という。)の代表取締役の地位にあつた被告人が、右会社の法人税を免れようと企て、同会社における昭和五四年三月期と同五五年三月期の二事業年度に亘る実際所得額が合計一七億五〇五三万二一〇七円もあつたのに、そのうち六億四一九四万六四一六円を秘匿して、一一億〇八五八万五六九一円しかなく、これに対する法人税額が四億二四四八万七八〇〇円である旨を記載した内容虚偽の各確定申告書を提出し、その結果、合計二億五六七七万九二〇〇円の法人税を免れた事案であつて、二事業年度全体の申告率が63.33パーセントに過ぎないうえ、その適脱率が37.69パーセントにも及ぶなど、この種事案として脱税規模が大きいこと、被告人が本件犯行に至つたのは、東邦精工の株式上場に備えて公表利益を調整し、もつて引受証券会社等に対し、さも東邦精工の業績が上昇傾向にあるかの如き印象を与えるとともに、不況時に備えて利益の内部蓄積を図り、かつ、被告人自身の資産の増加を企図したというものであつて、その動機には何ら酌むべき事情は認められないこと、のみならず、毎決算期の直前に、被告人において、経理担当者の作成した試算表を逐一検討して、東邦精工の各期における申告所得額を決定し、それに応じた経理操作を行うべく、経理担当者に具体的数額を記載した明細書を交付し、それに基づいて売上の計上除外と次期への繰延べ計上、仕入れの架空計上と次期分の繰上げ計上、期末たな卸高の計上除外をするよう事細く指示したこと、そして、それに見合うよう各種帳簿を書き直させたことはもとより、内容虚偽の決算書を作成させて本件所得申告に及んだばかりでなく、本社に支店、営業所の経理担当者を呼んで支店等に備え付けてある諸帳簿を改ざんするよう指示したほか、取引先に依頼して架空の納品書を作成させたこと、更に、東邦精工設立当時、被告人個人所有にかかる八九八三万円余の商品を持ち込んだとして、これを同会社の昭和五四年三月期の仕入れに架空計上させる一方、それが真実であるかのように装うため、取締役会の議事録をも偽造するなど、徹底した所得の隠ぺい工作を講じたものであつて、本件犯行の手段方法が極めて悪質であること、被告人は、本件脱税によつて取得した金員を株式の売買、商品取引、関連会社の増資に充て、あるいは被告人名義で預金するなど、そのほとんどを被告人自身が費消し、東邦精工のため内部留保されていないこと、同会社の昭和五二年三月期から同五四年三月期までの法人税につき、同年一二月に国税調査が行われて、その不正が指摘されたにもかかわらず、被告人は、悔い改めることなく、昭和五五年三月期の法人税についても脱税をしているうえ、以前にも国税局の査察を受けたことがあり、また、捜査段階で本件犯行のすべてを認めておりながら、原審において種々弁解を構え、実質的には脱税をしていないので、刑事責任を問われるいわれはない旨陳述するなど、十分反省しているとは言い難いこと、加えて、法人税法違反の罪で被告人と同時に起訴された東邦精工を、その公判係属中である昭和五七年一〇月二二日に訴訟関係人に何ら相談せず、その子会社である株式会社テーエチケー(代表者被告人)に吸収合併させて、東邦精工に対する右公訴を決定棄却するのやむなきに至らしめるなど、遵法精神が欠如していることに徴すると、被告人の刑事責任は重いといわなければならない。したがつて、被告人には前科がないこと、東邦精工において、国税調査に基づき、本件を含めた昭和五二年三月期以降の法人税につき修正申告をして、その本税はもとより、過少申告加算税及び重加算税のすべてを納付したこと、被告人は本件脱税により取得した金員に利息を付して東邦精工に全額返還したこと、その他所論指摘の情状を十分斟酌しても、被告人を懲役二年(四年間執行猶予)及び罰金七〇〇〇万円に処した原判決の量刑が重過ぎて不当であるとは認められない。

なお、所論は、起訴されていない法人ノ役員処罰ニ関スル法律違反の事実を取り上げ、それを主要な量刑事情に斟酌して、被告人に対し懲役刑のほか、罰金刑をも併科した点で原判決の量刑が著しく不当であると主張する。

ところで、刑事裁判において、起訴された犯罪事実のほかに、起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定したうえ、これを実質上処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し、そのため重く処罰することが許されないことは所論指摘のとおりである。しかしながら、原判決は、その量刑の事情で説示しているとおり、東邦精工の吸収合併には「処罰回避の目的がないとしても」としているほか、検察官が吸収合併したことにより罰金が免れたことを考慮して、被告人に対し、罰金併科の求刑をしたことにつき、「消滅した共同被告人に対する科刑を残る被告人に実質上転嫁するかのような量刑が当然妥当視されるものではない。」と判示していることに徴すると、原判決が被告人に対する法人ノ役員処罰ニ関スル法律違反の余罪の成立を認定し、これを実質上処罰する趣旨で被告人に罰金刑を併科したものとは認められない。本来、東邦精工に対する本件法人税法違反の事実が優に認定できるのであるから、同会社は同法違反の罪で罰金刑に処されるべきであつたところ、吸収合併により消滅したため、同会社において納付すべき罰金を免れた結果、罰金相当額の利益が同会社を吸収合併した株式会社テーエチケーに留保されることとなり、それがやがて株式配当等利益処分の財源になるであろうこと、被告人は、同会社の代表者で、しかも同会社が発行している株式総数の27.8パーセントに相当する株式を所有している筆頭株主であつて、資本、経営の両面で同会社を支配し得る地位にあることに鑑みると、究極的には本件脱税による諸利益を享受できる最大の帰属者が、結局は被告人自身であるとした原判決の説示は相当であり、それに他の諸事情をも併せて考慮し、納税意識の高揚を図るとともに、納税者の不公平を是正し、かつ、悪質な大口脱税を防止するという一般予防の見地から、原判決は、被告人に対し、罰金刑を併科したものと認めるのが相当であるから、論旨は理由がない。

よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(海老原震一 杉山英巳 新田誠志)

《参考・第一審判決理由》

〔主文〕

被告人を懲役二年及び罰金七〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

〔主文〕

被告人を懲役二年及び罰金七〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

〔理由〕

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都目黒区中町二丁目二三番一号に本店を置き、ベアリングの製造販売等を目的とする資本金五億円の東邦精工株式会社(昭和五七年一〇月一日東京都品川区上大崎二丁目一三番三八号株式会社テーエチケーに合併して消滅)の代表取締役として、同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、右東邦精工株式会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上げの一部を除外し、架空の仕入れや仕入れを水増し計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一 昭和五三年四月一日から昭和五四年三月三一日までの事業年度における右東邦精工株式会社の実際所得金額が八億二一四〇万八〇二七円(別紙(一)修正損益計算書〈省略〉参照)あつたのにかかわらず、確定申告書提出期限の延長処分による申告書提出期限内である昭和五四年六月三〇日、東京都目黒区中目黒五丁目二七番一六号所在の所轄目黒税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四億〇五七九万五八四七円でこれに対する法人税額が一億五六二八万七八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五七年押第一四九一号の1)を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三億二二五三万三〇〇〇円(別紙(三)税額計算書〈省略〉参照)と右申告税額との差額一億六六二四万五二〇〇円を免れ、

第二 昭和五四年四月一日から昭和五五年三月三一日までの事業年度における右東邦精工株式会社の実際所得金額が九億二九一二万四〇八〇円(別紙(二)修正損益計算書〈省略〉参照)あつたのにかかわらず、前記期限内の昭和五五年六月三〇日、前記目黒税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七億〇二七八万九八四四円でこれに対する法人税額が二億六八二〇万〇〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の2)を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三億五八七三万四〇〇〇円(別紙(三)税額計算書〈省略〉参照)と右申告税額との差額九〇五三万四〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(補足説明)

なお、被告人は、第一回公判期日において本件各犯行を認める旨陳述しながら、その後の公判期日並びに昭和五七年一一月一〇日付及び昭和五八年一月二七日付各上申書において、事由を縷述して本件各ほ脱所得金額ひいては一部犯罪の成否を争うかのようである。しかし、右各供述に鑑み関係証拠を検討しても、本件において各実際所得金額ひいてはほ脱所得金額の計算上、これに変動を及ぼすような事由はないとみるのが相当である。

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも、行為時においては昭和五六年法第五四号による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があつたときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、いずれも所定の懲役と罰金を併科し、かつ、各罪につき情状により法人税法一五九条二項を適用することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役二年及び罰金七〇〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により、同法二五条一項を適用し、この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

被告人は、会社を設立・経営するなどして多年ベアリング製品の開発・製造・販売等を業としている者で、昭和四五年に故あつてその経営にかかる日本トムソン株式会社を退社し、翌四六年に東邦精工株式会社(以下「東邦精工」という。)を設立、代表取締役に就任して事業を継続し、子会社として株式会社テーエチケー(以下「テーエチケー」という。)など数社を擁するなどして、近年では産業用ロボットなど数値制御の工作機械等に用いる直線運動用ベアリングの開発に成功して急激に業績を向上させ、東邦精工をしてベアリング業界大手六社に次ぐまでの企業に成長させたものであるが、本件は、判示のとおり、この東邦精工について、その代表取締役であつた被告人が、二事業年度にわたり、合計六億四一〇〇万円余の所得を秘匿し、合計二億五六〇〇円余の法人税を免れたという事案である。右各金額はいずれも高額であつて、その所得秘匿率は約三六パーセント、税ほ脱率は約三七パーセントに及んでいる。犯行の動機として、被告人は、東邦精工の株式を上場して右日本トムソン株式会社を追い抜くためには、東邦精工の利益を安定、漸増させる必要があり、そのためには利益調整を行わざるを得なかつたものであり、また、会社設立後まもなく東邦精工としては含み資産がなく、不況時に備えて利益を内部蓄積しておかねばならなかつた旨述べている。こうした事情はそれなりに理解できないではないが、その手段方法には自と限度があるのであつて、そのために脱税が正当化されるものではない。とりわけ、東邦精工が被告人及びその一族の支配する企業であつてみれば、つまるところ脱税は私的利益の増大に直結しているのであつて、本件動機において、特に斟酌すべきものがあるとは思われない。また、被告人は、本件各犯行に際して、自ら売上除外額、仕入水増額を決定し、これを経理担当者に指示して帳簿等の改ざんを行わせるなどしており、更に、簿外にした金銭で株式や商品取引等を行い、一部は自己において費消するなどしているのであつて、こうした公私混同も看過できないところである。加えて、被告人は、昭和三四年ころ当時経営の会社につき名古屋国税局の査察を受け、修正申立を余儀なくされたことがあるうえ、昭和五二年三月期から売上除外等を行つてきており、昭和五四年一二月には、本件昭和五四年三月期までの分について税務調査を受けているのに、その後更に本件判示第二の犯行に及んだものであつて、被告人の納税意識の希薄さは否定できない。更に、被告人は、後に詳述するように、処罰回避の目的がないとしても、株式上場のための本件公判中に訴訟関係者に諮ることなく東邦精工をその子会社であるテーエチケーに吸収合併させ、東邦精工に対する公訴を棄却するのやむなきに至らしめており、また、本件審理中も、会社を上場するためにはある程度の利益調整もやむを得なかつた旨述べている。これらの事情に徴すると、被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。

しかし、被告人にはこれまで前科はなく、本件についても修正申告を行い、これに伴う諸税も完納しており、被告人が代表取締役である前記テーエチケーについては、内部の経理体制を強化するとともに、監査法人の監査を受けることとなつており、被告人も二度とかかる不祥事を起こさない旨述べている。その他、ベアリング新製品の考案・開発等を通じて機械工業界ひいては社会に貢献してきたことなど被告人に有利な事情を考慮し、被告人に対しては、罰金と懲役を併科するものの特にその懲役刑の執行を猶予することとした。

なお、本件は、被告人寺町博のほか東邦精工を被告人として起訴され、併合審理を受けてきたもので、こうした両者につき有罪判決をする場合には、法人につき罰金刑、代表者等の行為者につき懲役刑を科するのが裁判実務上の通例といえる。しかるに、本件では公判審理中の昭和五七年一〇月一日東邦精工においてその子会社である前記テーエチケーに吸収合併され、その旨の登記もなされた。当裁判所は、後記の点を考慮したものの、結局、昭和五七年一二月二七日、東邦精工は合併により解散し存続しなくなつたことを理由に、刑事訴訟法三三九条一項四号により、東邦精工に対する公訴を棄却する決定をし、この決定は確定している。こうした事態は極めて異例のことであり、しかも、合併という人為的手続により被告人たる法人が処罰を免れるということを無制限に放任すべきでないことはいうまでもない。これに対処するため、「法人ノ役員処罰ニ関スル法律」があるものの、本件に関して検察官は同法律違反による刑事責任を問わないもののようである。また、本件合併後存続する前記テーエチケーは子会社とはいえ現に活動中であり、これを存続会社とし、東邦精工を被吸収会社としたのは、たまたま前者の株式の額面が一株五〇円であり後者のそれが五〇〇円であるため、株式上場に便利である点を考慮したものとみられ、右の合併自体ひいては東邦精工の刑事被告人たる地位の消滅を裁判上否認すべき特段の事由があるとは思われない。

このようにして、東邦精工が処罰を免れる結果となつたことから、検察官は、被告人に対する求刑として、懲役刑のほか法人にのみ科するを通例とする罰金刑の併科を主張する。しかし、消滅した共同被告人に対する科刑を残る被告人に実質上転嫁するかのような量刑が当然に妥当視されるものでないことはいうまでもない。ところが、本件においては、合併当時、東邦精工、テーエチケーのいずれも、資本・経営の両面において被告人が支配する会社であり、本件合併自体ないしその方式等も被告人の意向と選択に従つて決定されるもので、東邦精工が処罰を免れることは、単に罰金の支払いを免れるだけではなく、株式上場の面でも有利に展開するであろうことは、東京証券取引所の上場審査基準等に照らしても見易いところであり、究極的にしろこうした諸利益の最大の帰属者が被告人自身であることも疑いのないところである。そもそも、法人税法一五九条一項が行為者について懲役と罰金が併科される場合のあることを予定しているのは、行為者に対して懲役刑を科したのみでは刑の感銘力が期待できない場合に、更に罰金刑をも併科し、両者相まつて行為者に対する科刑の適正を図ろうとしたものと解される。このような事情に鑑みると、被告人に対しては主文掲記程度の罰金刑を併科するのはやむを得ないところと思料される。

よつて、主文のとおり判決する。

《参考・決定理由》

〔主文〕

本件公訴を棄却する。

〔理由〕

本件公訴事実は、「被告会社東邦精工株式会社は、東京都目黒区中町二丁目二三番一号に本店を置き、ベアリングの製造販売等を目的とする資本金五億円の株式会社であり、寺町博は被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、同人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、仕入を水増し計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一 昭和五三年四月一日から同五四年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八億二一四〇万八〇二七円あつたのにかかわらず、同五四年六月三〇日、東京都目黒区中目黒五丁目二七番一六号所在の所轄目黒税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四億〇五七九万五八四七円でこれに対する法人税額が一億五六二八万七八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三億二二五三万三〇〇〇円と右申告税額との差額一億六六二四万五二〇〇円を免れ

第二 昭和五四年四月一日から同五五年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九億二九一二万四〇八〇円あつたのにかかわらず、同五五年六月三〇日、前記目黒税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七億〇二七八万九八四四円でこれに対する法人税額が二億六八二〇万〇〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の告事業年度における正規の法人税額三億五八七三万四〇〇〇円と右申告税額との差額九〇五三万四〇〇〇円を免れ

たものである。」というのであるが、東京法務局品川出張所登記官作成の登記簿謄本その他関係証拠によると、被告会社は、昭和五七年一〇月一日東京都品川区上大崎二丁目一三番三八号株式会社テーエチケーに合併し、合併後存続する右株式会社テーエチケーにおいて、同月二二日、その旨の登記を了したものであることが明らかである。そうすると、被告会社は右合併により解散し、存続しなくなつたというのほかはないから、刑事訴訟法三三九条一項四号により本件公訴を棄却することとし、主文のとおり決定する。

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